「セカンド・オピニオン」 -大翔-

 最近「セカンドオピニオン」という言葉をよく耳にします。直訳すれば、第2の意見という意味です。現在診療を受けている医師とは別の医師、医療機関にも診断を受け、意見を求めることです。
 日本でも代替医療と共に患者主体の医療として広まりつつあります。



患者主体の医療として広がるセカンド・オピニオン
他の医師からもアドバイスを受ける

 セカンド・オピニオンは米国で生まれました。1980年代、先進州ほど手術の率が低いことに健康保険会社が気付き、医師たちが情報交換し、医療の標準化を図ることで、無駄な医療費を削ろうとしました。
 大幅なコスト削減にはならなかったが、制度として定着し、患者の当然の権利として認められた。日本でも医療情報や協力医師を紹介するインターネットの相談コーナーも出てきた。
 市民団体「セカンド・オピニオンを推進させる会」(神奈川県茅ヶ崎市)では、有料でセカンド・オピニオンの協力医を紹介している。98年の会の発足以来、約270人以上が紹介を受けました。
 東京や大坂を中心に700人以上の医師が登録。患者がTELやFAXで会に連絡すると、その名簿で地域や専門分野から適当な医師を選び、医師と相談のうえ予約する。患者側は検査データを持参し、受診するという仕組みだ。主治医にセカンド・オピニオンを受けることを申し出て、検査データが借りられることが紹介の条件になる。
 単に「いい医者を紹介して欲しい」というものではない。代表の中村康生さんはこの1、2年で病院や医師の意識は大きく変わった。不安に思う患者さんのまだいるが、検査データを提供してくれる病院は増えている。患者自身が納得いく治療法を選んでいくべきです。
 結果的に見ると、主治医と第2の意見が違うケースは1割ほど。それでも、多くが「これで納得して治療が受けられる」と満足するという。
 米国では、セカンド・オピニオンとして他の医師を紹介したり、意見を述べれば、保険が適用されるが、日本では保険診療の点数がつかない。
 点数化を求める動きもあるが、中村さんは「安易な点数化は医療費の無駄遣いにつながる」とくぎを刺す。主治医より医療レベルが劣る医師のセカンド・オピニオンでは意味ないからだ。「ある程度、疾患や受け入れ施設を限定してやってみるべきではないか」と話している。


■推進させる会のセカンド・オピニオンの実例
 

◆ 健康診断で食道のあたりに影があると言われ、近くの病院で精密検査。主治医から「食道の外側に腫瘍があり、すぐ手術を」。ガンかもしれないと思い、セカンド・オピニオンを希望。会では食道外科の専門医を紹介。検査データを持参し受診したところ、良性の腫瘍と分かり、しばらく定期的に観察することになった。(60才男性)

◆ 手のしびれ、歩行中のつまづきに苦しみ、大学病院の整形外科を受診、髄内腫瘍と診断され、手術を勧められた。主治医は「後遺症が残る恐れがある」と説明した。会では髄内腫瘍をガンマナイフで治療する脳神経外科の医師を紹介。しかし、腫瘍の位置から「ガンマナイフでは無理だ」という診断だった。最初の大学病院に戻り、納得して手術を受けた。(28才、女性)

◆ 県立病院では子宮筋腫と子宮内膜症と診断される。子宮の摘出はせず、ホルモン治療。微熱やたるさが続き、セカンド・オピニオンを希望。会で紹介した専門医は「5ヶ月して変化なければ摘出を。薬も別の合うものを」。治療方針の説明を受けて安心し、転院した。(41才、女性)


「医療情報開示が普及に必須」

 日本の開業医ら(解答約350人)にセカンドオピニオンを知っているか聞いたところ、「知っている」と答えたのは、46%。この内「関与したことがある」が56%。国立大学の医師では「知っている」が82%、「関予した」は97%でした。日米間ではだいぶ温度差があります。シカゴとボストンでの調査はどちらも100%でした。
 米国ではこの20年間でセカンドオピニオンが制度として定着し、次の発展段階に入っています。マサチューセッツ総合病院では、患者や家族が病院内の情報センターで、病気や治療法について自由に調べることができます。
 こうした取り組みはセカンドオピニオン制度を補強していくものでしょう。知り合いのケースワーカーも「制度をうまく動かすには、患者さん自身にもっと学習してもらうことが、大事だ」と言っていました。

 主治医と患者の関係がこじれ、別の医師を探すというのは本来のセカンド・オピニオンではありません。主治医の話しを理解した上で、別個のアドバイスを受けるというものです。
 セカンド・オピニオンを確立するには、医療情報の開示が必須の条件です。医者がどう診断し、治療を行ったか、患者との間をつなぐ証拠はカルテですが、カルテにはほとんど何も書いていない先生が多いのです。第三者に読めないカルテもたくさんあります。
 また日本は医療の標準化が立ち遅れています。例えば風邪をひいて熱をだした場合、A先生は熱さましの頓服だけを処方し、生活の指導をする。B先生は抗生物質や胃薬などたくさん薬を出し、C先生はさらに点滴をする。処置は千差万別です。
 どの先生がいいのでしょうか。最初から抗生物質を使う必要はなく、しかも抗生物質や熱さましをいれた点滴は重大な副作用をもたらす可能性があります。しかし、点滴をしてくれる先生を求めて来院する患者も少なくありません。医者もその方がもうかります。
 こうした無駄をなくし、診断や治療法の標準化を進めなければ、セカンド・オピニオンのような双方向の情報交換は機能しません。

 医師の良心としてやりなさいということでは限界があります。医師の経済活動も含め、制度として環境整備すべきです。自由診療として認めるのも一つの考えだと思います。
 国民皆保険制度が危機に陥りつつある状況で、診断効率化と過剰医療の抑制に積極的な施策が求められています。
 まず、医者は第三者に分かるカルテを書き開示する。同時に患者さんにも病気や体に対して自己責任を負っているという自覚を育てていくことです。

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