-認知症とプロポリス-

光明堂漢方生薬

 医科学博士 石合 忍

日本では認知症患者の数が急激に増加し、厚生労働省の統計によると、認知症発生者数(軽度認知障害を含む)は862万人にのぼることがわかりました。これは65歳以上の4人に1人に相当します。

超高齢化がすすむ日本において、認知症は本人のQOL(生活の質)の低下だけでなく介護をする家族の負担、医療費あ介護費なで社会保障費の増大と言った国家レベルで取り組まなければならない最重要な社会問題の一つとなっており、予防・診断・治療法の開発が急務とされています。

そのような社会情勢の中、当社のプロポリスを使用している方から認知症に効果があるという報告が多くあり、当社ではプロポリスによる認知症対策の可能性を求め、山梨大学医学部と共同で予防・治療についての研究を進めてきました。プロポリスの認知症予防効果はこれまで報告がなく、神経科学学会では最も権威のある北米神経科学会において2012年に当社が初めて学術発表を行いました。今回の会報では、認知症予防効果や抗腫瘍効果の期待できる医療レベルのプロポリスはどのようなものかを解説します。なお、本年1月に(Science Advances)に発表され大きな話題になった歯周病とアルツハイマー型認知症に関する最新研究発表についても解説し、プロポリスの歯周病予防効果と認知症の関わりについて説明します。

認知症の60%をしめるアルツハイマー型認知症

(北米神経科学会で発表したプロポリスの認知症予防効果の一部を紹介します)

三大認知症
認知症は様々な病気によって引き起こされ、その原因や症状によって分けられます。なかでも三大認知症と呼ばれるものが、アルツハイマー型、脳血管性型、レビー小体型です。アルツハイマー型認知症は、アルツハイマー病によって脳の大脳皮質という部分が障害により神経細胞が急激に減少し、脳が委縮するため高度の知能低下や人格に崩壊が起きる認知症です。脳血管性認知症は、脳の血管が詰まってしまい、その先に血液が行かなくなり、神経細胞が血液から栄養を摂取できなくなることで神経細胞の働きが低下し、細胞死を起こしてしまいます。そのため、物忘れがひどくなり、やがて認知症にいたります。

レビー小体型認知症は、認知機能障害に加えて、幻覚やパーキンソン症候群を発症認知症で、手足の震え、睡眠障害、失神、転倒などを起こします。その中で認知症全体の約60%を占めるのがアルツハイマー型認知症です。

 アルツハイマー型認知症の特徴
-アミロイドβとタウ蛋白の二つの物質が関係-

 アルツハイマー型認知症患者の脳には特徴的な変化がみられることが分かっています。アミロイドβとタウ蛋白という、二つの物質の存在です。アルツハイマー型認知症患者の脳は健康な高齢者の脳に比べて、アミロイドβとタウ蛋白が比較にならないほど多量に出現していることがわかっています。アミロイドβという物質は、発生する20年以上前から脳に沈着し始めるといわれ、アルツハイマー病の発症・進行に深く関係していると考えられています。アミロイドβは脳の神経細胞の外に凝集・沈着し、老人班と呼ばれるシミのような異常構成物を作ります。また脳の神経細胞の内にあるタウ蛋白はリン酸化することで、異常はタウ蛋白は細胞内から神経細胞を攻撃します。その結果として、脳の神経細胞が死滅し、アルツハイマー病を発症します

 
北米神経科学会で発表したプロポリス研究 抜粋

1. アルツハイマー型認知症の原因であるアミロイドβから神経細胞を保護するプロポリスの効果

プロポリスがアミロイドβから神経細胞を保護するはたらきを検証した。方法・人由来の正常神経細胞に凝集アミロイドβを加え、培養後に正常神経細胞生存率を測定しました。

凝集アミロイドβによって正常神経細胞生存率と測定しました。凝集アミロイドβによって正常神経細胞の生存率が70%に減少していることが確認されました。

次に、あらかじめプロポリスで処理した正常神経細胞にアミロイドβを加え、培養後に正常神経細胞に生存率を測定しました。

その結果、プロポリスの濃度の増加に従って正常神経細胞の生存率は上昇しました。結果、プロポリスは、凝集アミロイドβによる毒性から神経細胞を保護することが確認されました。

2.プロポリスのアミロイドβ凝集抑制効果
アミロイドβは凝集することで強い毒性を発し、神経細胞を破壊します。そこでl、プロポリスがアミロイドβの凝集を抑える働きについて検証しました。アミロイドβの凝集に反応して発光する蛍光色素を用い、その光の強度を測ることで凝集率を測定しました。縦軸はアミロイドβの凝集率、横軸はプロポリスの量を表します。その結果プロポリスはアミロイドβの凝集を約20%にまで抑えることが確認されました。
これらの結果から、プロポリスのアルツハイマー型認知症予防のはたらきとして、次のことが考えられます。
(イ) プロポリスは凝集アミロイドβの毒性から神経細胞を保護する。
(ロ) アミロイドβの凝集を抑えることで毒性を抑える。
アルツハイマー型認知症は潜伏期間が長く、発症後の治療は非常に難しいとされています。そのため発症前の早期からの予防が非常に重要な疾患であるといえます。この種の病気の予防手段としては、発症が不確実な病気に対して薬を服用するよりも、予防効果のある食品を日常的に摂取することが効果的であるといえます。今回の研究によって、プロポリスには認知症予防効果が期待されることが示唆されました。

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